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報告 前田 究
残暑が厳しい8月31日(日)、鹿児島国際大学【鹿児島市坂之上】で伴走者講習会が開催されました。
鹿児島県内には視覚に障害がある陸上競技選手が多く、とりわけ短距離を専門とする選手の数は九州でも随一です。そのため鹿児島県障害者陸上競技連盟では視覚障害選手のパートナーである伴走者の確保が課題で、伴走部会を設けるなど対策を講ずるものの、短距離の伴走ができる人材が慢性的に不足しています。こういった現状を少しでも打破したいと、九州身体障害者陸上競技協会主催の伴走講習会を開くに至りました。
講習会では、鹿児島国際大学と鹿児島国際大学陸上競技部に協力をいただき、九州でも有数といえる室内運動場フィールドハウス(インドアに300mのタータントラック)の使用が実現。鹿児島国際大学陸上競技部を中心に24人の参加者が集いました。
講習会は三雲明美選手による講義「伴走者の現状と課題」から始まりました。
三雲選手は、全国障害者スポーツ大会やフェスピックなどの競技活動や伴走者との出合いについて紹介。真のアスリートは自分自身が強くなるだけではいけないと、走ることをあきらめた視覚障害者に走る楽しみを知ってもらうクラブ「ブラインドランナーズ」を設立した経緯についても説明し、伴走者の必要性と、短距離の伴走者が不足している現状を訴えました。
実技は、第8回フェスピック釜山大会で日本代表ガイドランナーとして、三雲選手を伴走した平井達雄氏(有限会社太陽スポーツクラブ指導員)が担当しました。
平井氏は、鹿児島大学時代に三雲選手と知り合ったことから伴走者としての技術を磨き、大学院では伴走者の在り方について研究。これまでも数回伴走講習会で指導を担当した実績を持っており、体系的に伴走技術を指導できる人材として貴重な存在です。
今回は秀逸なテキストを準備し、自身で手本を見せながら、伴走初体験が多くを占める参加者に指導しました。片方がアイマスクをした晴眼者同志のペアや補助員で駆けつけてくれた視覚障害者選手とペアになった参加者は、不安な中ウォーキングを開始。慣れるとともに、ジョッグ、動きづくりと難度が高まります。
重要となる動きづくりで平井氏は、視覚障害選手に対して、いかに声を掛ければ正確に伝わるのか、その心配りの必要性を説き、対策として関節部分を具合的に指示すると伝えやすいことをアドバイスしました。
実技は短時間ながら、コーナー走やスターティングブロックを用いたスタート練習まで行い終了。最後の質疑応答で講義を締めました。
100分の1秒を競う短距離走は、伴走技術も高難度で、選手との呼吸を合わせるのに時間を要します。それゆえトレーニングから大会での実走までサポートできる伴走者を確保する難しさは、並大抵のものではありません。今回の参加者の中で、視覚障害選手と共に夢を目指す伴走に魅力を感じ、仲間に入ってくれる人がひとりでも増えればと切に思いました。
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