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トレーニングのヒント1 〜ローラー駆動と競技成績〜

1.はじめに
車いすマラソンは、選手の精神的能力、身体的能力(筋力・持久力等)、車いすの性能、技術(ポジション・フォーム・レース駆け引き等)が関連し、競技成績を左右すると考えられます。そこで、その中の一つ、技術力を評価する目的でトレーニングローラーを使用して選手の駆動スピードを調査しました。


2.対象と方法
世界記録保持者のハインツ・フレイ選手と国内の有力選手9名の合計10名を対象としました。ローラーの回転軸から速度が記録できるように、市販のトレーニング用ローラー(TOP END社製)に改造を加え、回転軸から得られる速度のデーターはそのままコンピューターに記録しました。瞬間最高速度を3回、5分間の持続走を1回行ってもらいました(図1)。結果は同年の大分国際車いすマラソンの完走タイムと比較しました。




3.結果と考察
フレイ選手の瞬間最高速度は34.1km/h、5分間走の平均速度は30.0km/hでした。フレイ選手の5分間走の速度は比較的保たれており、5分間休むことなく一定のピッチで駆動を続けていました。フレイ選手の駆動頻度は120回/分で5分間に乱れることはありませんでした。
一方、国内選手の中には途中から極端に速度の低下する選手Aや、駆動速度が一定せずにバラツキを見せる選手B等が認められました(図2)。特に、選手Aは駆動開始期に100回/分であった駆動頻度が終了時には88回/分となり、選手Bは2分過ぎから一定の駆動ピッチを保つことができずに、開始期84回/分であった駆動頻度が2分以降は66回/分程度にまで低下していました。
我々は、例えば選手Aに対しては、前半は瞬間最高速度の8割程度の駆動ができているにもかかわらず1分半頃より極端に速度が低下していることから持久力にポイントをおいたトレーニングと瞬間最高速度を高めるための筋力トレーニングをアドバイスしました。また、選手Bには、瞬間最高速度は十分に高い結果を出すことができているので一定のピッチで、一定の速度で駆動できるように持久力の強化を中心としたトレーニングの必要性をアドバイスしました。さらに両者に対して、自分の駆動ペースを把握することは長距離走では特に重要であることも併せてアドバイスしました。




今回得られた結果から、瞬間最高速度は実際のマラソンの完走タイムと関係していませんでしたが、5分走の平均速度は完走タイムと統計学的に有意な関係を認めました。しかも得られた式から、5分走の平均速度が 1km/h速くなれば、完走タイムを約2分30秒改善できることが推定されました(図3)。
今回の測定で使用したローラーは、抵抗が大きすぎたために実走とは異なった点があったと思います。しかしすべての測定は同一のローラー上で行っているために、選手間の比較という点では有用な情報が得られたと考えています。
フレイ選手よりも速い5分走の平均速度を記録しながら、フレイ選手よりも遅い競技成績に終わった選手が何人かいます。これはやはり今回使用したローラーが適切でなかったことと、今回は5分間走で測定したために、少し時間が短かったことが影響していると考えています。10分程度にすればもっと傾向がはっきりしたかも知れません。

4.まとめ
選手の協力を得てローラー上の駆動速度を計測したところ、5分間走の平均速度と競技成績に有意な関係が認められました。持久力を問われる長距離レースでは自分のペースを把握してオーバーペースにならないようにしなければなりません。一方、オーバーペースを恐れて消極的なレース展開になってしまうことも問題です。日頃のトレーニングで自分のペースを掴み、持続して速く走れるように意識した練習が必要です。今回の結果が、トレーニングの参考になれば幸いです。




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