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筋微小傷害と障害者スポーツ

筋微小傷害と障害者スポーツ
聖マリア病院リハビリテーションセンター 井手 睦

 障害の有無に関らず、トレーニングなどによって筋肉を酷使した後に痛みやだるさを感じた経験は誰にでもあるでしょう。この‘使いすぎた感じ’は筋肉の疲労のサインであり、程度の差はあっても筋肉を構成する組織がダメージを受けている状態と考えることができます。

筋肉のダメージを自分で認識する指標としては、筋肉の痛み(DOMS:Delayed Onset Muscle Soreness)があり、これは文字通り運動後に生じる痛みがどれ位強いかというものです。ダメージを受けた筋肉を構成する筋組織からは、‘破れた’組織の間からあるいは筋組織を覆う膜から‘もれてくるように’タンパク質の一種が血液中に出てきます。このタンパク質、‘筋逸脱酵素’を測ることで客観的にダメージの程度を推し量ることもできます。

地震による建物の倒壊などで相当量の筋肉が機械的傷害を受けたとき・軍隊の過酷な訓練で筋肉に過剰な負荷がかかったとき、などにこの筋逸脱酵素が原因で急性腎不全を発症したという報告は多々あります。アスリートに気に掛けて欲しいのはこのような特殊なケースよりも、筋肉のダメージが続いている間にはできるだけ筋肉を休ませて筋組織の回復を待つべきということです。

私たちは大分車いすマラソンのフルマラソンの参加者25名について、試合の前後で血液中の筋逸脱酵素の値を測定し、この競技が選手の筋肉に与えたダメージの回復過程を検討しました。血液の採取は競技の24時間前・競技直後・競技の24時間後・競技の1週間後、の4回行われました。グラフにミオグロビン(Mb)・クレアチンキナーゼ(CK)という2種類のタンパク質の血液中濃度の変化を表しています。





ミオグロビン(Mb)は競技直後にピーク値に達し、競技後24時間で競技前のレベルに戻っています。クレアチンキナーゼ(CK)は競技後24時間にピーク値となり一週間後には競技前のレベルとなっています。2つのタンパク質でピーク値に達する時間が異なっているのは、 ‘大きさ’の違いがそれぞれのタンパク質が筋組織から血液中にもれ出てくるのに要する時間に影響することが理由のひとつとされています。また、クレアチンキナーゼ(CK)については血液中濃度が1000(U/L)を超えると腎臓の機能障害などをひきおこす「横紋筋融解症」の状態と診断されますが、フルマラソンのように運動負荷の高い競技に参加してもこの‘危険域’には到達せず、安全とみなすことができると推定されます。

 注意していただきたいのは、運動負荷の高い競技に参加した後、あるいは過度のトレーニングを行った後には筋肉が本来の状態にもどるのに24時間〜数日間はかかることになるという事です。この期間には、酷使した筋肉を休める事として、トレーニングを行うとしてもコンディションニング程度の軽いものにしておく方が、後の筋肉のパフォーマンスをより高いものにすることができると考えてよいでしょう。



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